年金211万円の壁とは

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年金セミナー開催


令和4年1月30日(日)、港北公会堂で「知らないと損をする年金の話」(主催:NPO法人 くらしの経済サポートセンター)というテーマでセミナー講師を務めさせていただきました。
第一部で年金定期便に記載のない年金「加給年金」、「振替加算」をはじめ、「遺族年金」、「年金の繰上げ受給、繰下げ受給」、「離婚時の年金分割」等々の話、第二部で「iDeCoでそなえよう自分年金」という話。
どちらも将来にそなえて、これから年金の準備をしっかりしていこうという趣旨の話をしました。


今後の日本


日本はこれから2025年問題といって、いわゆる「団塊の世代」800万人全員が75歳以上、つまり国民の四人に一人が後期高齢者という超高齢化社会を迎えます。
また、去年行われた国勢調査の速報値によると、日本の人口は1億2622万7000人で、前回5年前の調査と比べて86万8000人も減っています。
超少子高齢化時代の到来により、公的年金の受取額は今後ますます少なくなっていくと思われます。


セミナー後の質問で


年金のもらい忘れがないよう、将来年金が減っても困らないように準備していこうという内容で話を進めていきましたが、セミナーが終わった後の質問で「年金211万円の壁」について質問されました。
「年金211万円の壁?」恥ずかしながら、初めて耳にする言葉でした。
その場でググると、「年金211万円の壁」とは、主に65歳以上の夫婦二人の年金生活世帯が、住民税非課税世帯になるかどうかの境界のこと。
質問された方は、211万円に抑えるために、年金の繰上げ受給を考えているとのことでした。
セミナー講師をするにあたって、年金関係の本を何冊も読みましたが、「年金211万円の壁」について触れた本は一切ありませんでした。
家に帰ってネット検索するといろいろ出てくる出てくる、YouTubeでも取り上げられています。
反対に、私の方がいい勉強をさせてもらったと思います。


年金211万円の壁とは


そこで「年金211万円の壁」について、簡単にまとめてみました。
211万円とは住民税が課税されるか否かの境界で、計算式は以下のとおりです。


【計算式】扶養人数×35万円+31万円
35万円(あなたの基礎控除)+35万円(配偶者の基礎控除)+31万円(扶養の家族がいる方だけがプラスされる額)


2×35万円+31万円=101万円
それに65歳以上年金の基礎控除110万円をたして、110万円+101万円=211万円


ただし、101万円の部分は1級地を適用した場合で、1級から3級地で以下のとおり変わります。
1級地 35万円×2+31万円=101万円
2級地 31.5万円×2+28.9万円=91.9万円
3級地 28万円×2+26.8万円=82.8万円


ご自分のお住まいの地域が何級地かは、以下の表をご参照ください。
厚生労働省 級地区分表【平成30年度以降版】


年金211万円の壁のメリット



  1.   1.住民税がかからない

  2.   2.国民健康保険料が安くなる

  3.   3.介護保険料が安くなる

  4.   4.高額療養費制度の限度額が下がる

  5.   5.75歳以上の方の医療費が安くなる

  6.   6.その他自治体による特典


その他自治体による特典では、世帯全員が住民税非課税の場合、NHKの受信料が無料になる、
バスや電車などの交通機関が半額や無料になる、予防接種が無料になるなど結構な特典です。


まとめ


「年金211万円の壁」のメリットが多すぎて、思わず我が家でも繰上げ受給しようか考えてしまいました。
が、心配性がたたって、財形年金や個人年金やあれこれ手を出していて手遅れでした。。
手遅れだから負け惜しみで言うわけではありませんが・・ちょっと待ってください!
年金はしょっちゅう制度改正を行っています。ちなみに2022年度の年金も物価が上昇しているにもかかわらず0.4%減額されています。
いったん繰上げ受給を選択したら、取り消しができません。
繰上げ受給により減額した年金が、今後さらに減っていき、住民税の非課税制度の境界も下がって211万円が適用外になったら取り返しがつきません。
公的年金は国の税金も投与され、死ぬまで給付される、私的年金より何倍もありがたい存在です。
もうじき65歳でちょうど「211万円の壁」の恩恵を受けられる人は別として、65歳まで何年もある人は、やはり長生きのリスクにそなえて年金を増やす努力をする方をおススメします。


参考までに、令和2年の年金受給状況について
老齢基礎年金 繰上げ(16.8%) 本来(80.7%) 繰下げ(2.6%)
老齢厚生年金 繰上げ(0.5%) 本来(98.5%) 繰下げ(1.0%)
【参照】厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報」


執筆者 辻村洋子(CFP® 1級FP技能士)